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「これが、元、帝国軍第二将軍とは、情けないと思いませんか?」
男は倒れた俺の腹の傷を踵で踏みにじった。
「ぐわああっ!!」
遠退いた意識が、痛みのあまりに一瞬で引き寄せられた。
「他人の力を借りて強くなったつもりのお前に言われる筋合いはない」
「ほう、わかったような口を」
男は更に俺の腹を踏みにじる。
「ぐううっ!」
「帝国は強者しか必要としません。
どんな手段を使っても強さがあれば、それが正義なのです。
貴方も抜けるなどしなければ、死ぬこともなかったのに」
少しだけ語尾に寂しさを漂わせながら、男は言った。
「俺は、竜を踏みにじってまで得る強さなど、不要だ。
皇帝の醜い姿は何だ?
人を捨ててまで得る強さの先に何があるんだ?」
「貴方には皇帝陛下の崇高なお志が理解できないのですね。
あの方こそ、世界の統一と共に頂点に立つお方だというのに」
「それが世界の混乱を招いているんだよ!
俺は帝国なんかと一切関わりたくないね」
血を吐きながら話す俺を、男は冷ややかに見下す。
「理解しあえないのは残念ですが、貴方の死は決定事項ですし、今は私が第二将軍ですから、今後のことはお気になさらず安心して逝きなさい」
そう言って首に剣を刺された瞬間から、俺の意識は暗闇に飲み込まれた。
最後の瞬間、床に転がったままの俺の片目の視界の端で、陰に隠れた黄土色の小動物が動くのが見えた…
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