《第四章》蛇に魅せられたたイヴ
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《第四章》蛇に魅せられたたイヴ

 美和からチケットをもらったショーが行われる店は、歩が働いているヨガ教室から離れたところにある。歩は黒いトレンチコートを羽織った姿で、そこへ足早に向かっていた。すっかり日が落ちたせいで、通りを吹き抜ける風も冷たさを増しており、ひんやりとした肌寒さを感じたものだった。  週末の夜だからか大通りは大いに賑わい、歩道は行きかう人の群れですっかり溢れかえっていた。車のヘッドライトから放たれる眩しい光に照らされて、車道の脇に植えられている木々の枝葉が闇の中にぼんやり浮かび上がっている。それらを目にしながら歩いていると、心を煩わせている出来事が突然頭の中に浮かんできてしまい、歩は思わず顔を顰めてしまう。その出来事とはもちろん昨日の出来事である。 (なんなのよ、全く……)  小ばかにしたような忍び笑いをしている渡海の姿が頭の中に浮かんできて、せっかく鎮まりかけていた怒りが再燃した。 (なんだってあの男は、いつもいつも気に障ることばかりするのよ! ああ本当にムカつく!)     
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