第2章 歯車

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ユリの誕生日は夏休みに入って一週間後だった。 ユリとハヤトは、 終業式の前に、 誕生日当日に映画を観に行く約束をした。 ハヤトはウキウキしている。ほとんど付き合っているという感覚だった。 ユリは、まだ告白もしてないし、されてないし、ハヤトの気持ちを伺っている状態。 先日、ジーンズを笑われたこともあり、やや複雑な心境だった。 ハヤトには、ユリの気持ちが十分伝わっていたが、ハヤトの気持ちがどうなのかユリにはよくわからないままだった。 ・・・ ついにユリの誕生日がきた。 16歳になった。 少し大人っぽくタイトスカートを履いていく。 ハヤトは、小柄ながら少々大人びた顔だち。私服を着るとだいぶ大人に見えた。 映画は 「タスマニア物語」 動物好きの二人が観そうな映画だ。 それをみた後に周辺を散歩していた。 目の前にラブホテルが出てきた。 ユリは少しドキドキしながら ホテルの前に差し掛かる。 ハヤトをホテル側にちょんと体当たりしてみた。 「入りたいの?」とハヤトは笑って尋ねた。 「いや、まさか…」と首を横にふって笑いながら否定した。 ハヤトの誕生日はユリの誕生日からさらに1ヶ月後。まだ15歳だった。 入ることはなく素通りした。ハヤトは冷静だった。 お金もない。まだ若い。 別の理由なのか… 散歩のあとは 小料理屋さんに入った。 ユリはジュースで、 ハヤトはお酒で おしゃべりとお料理を楽しんだ。 真面目に生活して育ってきたユリは、 少しやんちゃさもあるハヤトにどんどん惹かれていく。 二人の距離はさらにぐっと縮まったが、 まだ手も繋いでいない。 ユリはハヤトの気持ちがわからず、 まだ不安な気持ちもあった。
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