第1章 同級生

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ユリ、エミ、マサキ、ハヤトで休み時間に会話をすることが多くなる。 マサキはいつも笑顔だった。 それは、エミがいるからなのだが、 ユリはそんなことに気づいていない。 エミにだけ、 マサキのことが気になっていることを伝えた。 ある日、 4人のあだ名を決めよう!と、 それぞれ考えて次の休み時間に集まる。 マサキが、 ハヤトは、そのままハヤトかなぁ。 井上さんは、えっちゃん。 田村さんは…、 うーん。… ユリちゃんじゃつまんないかな? 「もしかして、数学の時間、ユリのあだなのことばかり考えてた?」 と間髪いれず訊いたのは、エミだった。 「…いや、そんなこともないけど…」 マサキがニヤケながら答える。 さりげなく、気持ちを探るのも上手なエミだった。 マサキは、皆から、まーちゃんで決まった。 高校では 春のイベントは、文化祭。 クラスで何をやるか決めなければならない。 話題は 文化祭の出し物、 そして 終わった後の打ち上げについて クラスみんなで盛り上がっていく。 数日後、 この日の理科の授業は実験だった。 理科室では 男女混合班で着席する。 男子3人、女子2人、計5人。 エミとハヤトが同じ班 ユリとマサキが同じ班 今日は顕微鏡を使う。二人一組で作業する。 一人が、 スライドガラスとカバーガラスの間の試料に、スポイトで薬品を注入する。 もう一人は、顕微鏡を覗きながら、ピントを合わせ、見えたものを記録。 皆がどちらの役も交代でやるよう先生から指示がでた。 ユリの班では、もう一人の女子が欠席だった。 男子は3人でうまく交代しながら、実験をこなしていた。 2 × 2 に分かれれば良いのは、大人になれば簡単に分かることだが、当時の男子の中には、女子と話すことを恥ずかしがる子もいて、 ユリは男子が一周りするのを待っていた。 ユリが 「あの、スポイト…お願い…」と マサキに声をかけた。 マサキは 「自分でやれよ」 冷たく返事しつつも、スポイトを準備し始めた。一切の笑顔もない。 ユリは、この返答がショックで、実験どころではなかった。 マサキに薬品を注入してもらい、急いで顕微鏡のピントを合わせたが、うまくいくはずもなく、ボケたまま記録した。 この出来事は、ずっと尾をひいてしまう。
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