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「誰かー! いないの! 誰かー!」
精一杯灯子は発声して助けを呼ぶ。灯子が何度目か声を張り上げると肩に凭れた重みが増した。
「えっ、ちょっと、大丈夫っ?」
闖入者は目を閉じてほぼ灯子に体重を預けている。無反応から意識を手放し掛けていると気が付いて焦る灯子に、遠くから近付く声が響いて来た。
「あ、……こっちです!」
駆けて来る数名の職員へ闖入者の肩を抱くほうとは逆の手を振って応える。
懸け付けて吃驚する職員へ救急車を要請しようとしたのと、闖入者の囁きが耳に入ったのは同時だった。
「……な、で、あ、たが……」
“何であんたが”
灯子は、確かにそう聞いた。
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