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この世界には、何百人ものヒーローが存在する。
ある者は超能力でアメリカを守り、またある者は魔法の力でフランスを守っている。このように世界各国にヒーローは存在し、そして人類を守るため日々怪獣たちと戦っている。
それらはどの国でも起こりうる、天災のような現象として考えられていた。
──
「うわあ、怪獣だ!」
町で悲鳴があがる。
突如現れた巨大な怪獣は、高層ビルを破壊し、商店街を踏み散らかした。恐怖におののいた人々は、我先にその場から逃れようと懸命に走っていた。
「皆さん、早く安全なところへ!」
そこへ現れたのは、赤いジャンパーに身を包んだ者たちだった。
彼らはヒーローではない。日本の国防省が所有する独自の防衛機関「JAPAN DEFENSE ORGANIZATION」──通称ジェイドだ。
ジェイドは、宇宙飛行士並の特殊訓練を受けた者たちによる少数精鋭部隊であり、高い身体能力と精神力を兼ね備えた、頼れる戦士たちだ。
「ありがとうジェイド!」
市民の安全を確認したジェイド隊員たちは、レーザー銃を怪獣に照射する。
彼らの主な役割は、ヒーローが駆けつけるまでの間、敵と戦うことだ。今の日本の科学力では、隕石は破壊できても、宇宙から飛来した円盤を溶かすことはできない。それができるのは、ヒーローだけなのだ。
「くそ!なんて分厚い装甲だ!まるで鉛の壁じゃないか!」
「諦めるな!何としてもヤツの進行を食い止めるんだ!」
そのとき、天を裂くようにして光の帯が現れた。
「天機だ!天機が来てくれた!」
物陰にいた市民たちが顔をあげ、皆一斉に空を指差した。
光の中から現れたのは、怪獣と同じくらい大きなロボット──天機だった。
天機はいつの頃からか、怪獣が出現すると時を同じくして現れるようになったヒーローだ。天使の羽に似た機械の翼を持つため、市民たちの間で「テンキ」と呼ばれている。
天機はどこからともなく炎の剣を取り出すと、勢い良くなぎはらった。炎の剣は怪獣の脇から腹を大きく裂き、身を焼いた。だが怪獣も負けてはいない。天機の腕を掴むと鋭い牙で噛み付いた。
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