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彼女が笑うと、花が咲いたように空間が明るくなる。
「だったら、僕が死ぬまでかな……モコに寿命はあるの?」
「ないよ。クロム君が描いたわたしの絵がある限り、存在すると思う~」
モコの一言で合点がいった。描いた怪獣の出現条件はまだわからないが、消滅条件は「実体を倒す」か「絵を破壊する」か、ということだろう。
夕食の準備が整うと、2人は手を合わせて食べ始めた。
ニュース番組では、今日の戦闘において犠牲者となった人の一覧を表示していた。写真とともに映し出されたリストの中には、あの新人警備員もいた。
(……申し訳ないことをした。)
佐久間はテレビに向かって手を合わせた。
(でも、罪悪感が少し消えている……)
たくさん泣いたからか、はたまた吐いたからか。それとも、ジェイド隊員たちに本当のことを伝えたにも関わらず、まともに取り合ってもらえなかったせいだろうか。
(どちらにしても、あの精神状態じゃあ、まともに絵が描けないからな……)
自分が生きていくためには収入がいる。今から怪獣研究家になることも不可能ではないだろうが、画家としてやっていけるなら、そのほうが良い。仕事を続けるためにも、怪獣の出現条件を知る必要がある。
(だが、無闇やたらに怪獣を描くこともできない……)
万が一、実体化してしまったら、また恐ろしいことになる。
佐久間はパスタをフォークに巻きつけ、口へ入れた。今日の味付けは甘すぎる。
「モコ、カルボナーラ……少し甘くないか。」
「……ふりすぎた胡椒を緩和しようと、砂糖を入れたのが良くなかったのかも……」
モコの獣耳と尾が悲しそうに垂れる。そういえば、彼女も自分が生み出した怪獣のはずだが、どこにも怪獣らしい要素はない。
「モコは怪獣っぽくないなあ。町を破壊したいとは思わないのか?」
「え、思わないよ~モコはクロム君の彼女だからね。」
だとすれば、悪意のない怪獣だって生み出せるのではないだろうか。
食事を終えた佐久間は、さっそくキャンバスを取り出した。群青色の顔料をベースに、大きな丸を描き、そして中央に白と赤で巨大な目玉を描き込んでいく。
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