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私は、「人に物を教える」のが好きだ。
「人が知らない事を教えてあげるのが嬉しい」。私の中ではある種の「生きがい」となっていたのかもしれない。まず小さい頃に勉強、大人になった時に人との付き合い方。…そして歳をとってからは、「魔法」を教えるようになっていた。だがみんなに同じ魔法を教えるのは正直に言うと、つまらない。まずその子達が何を「得意としているか、そして何を苦手としている」かを見てから、術を教えてあげる事にした。体力が低い子には筋力強化の術を、集中力があまり無い子には集中しやすくする術を。…という感じだ。恐らく私の教え方はいい方だったのだろう。私の教えた子達のほとんどが、独立した後強い魔法使いになる事ができたようだ。その成果が買われているからか、私は何度か複数ある「魔法使いを育てる場所」から、講師としてスカウトされた事がある。提示してきた報酬も「それなりに」高かった。だが私はそれを全て、断り続けてきた。理由としては単純だ、私自身は「教えるのが好き」なだけで、魔法使いとして上を目指すつもりは、毛頭無いからだ。私にとって魔法は、人に物を教える為の「教材」の一つにすぎない。そう、私は少し「変わった人間」なのかもしれない。何かを教える事は大好きだが、それ自体に「興味を持つ事が、一度も無かった」のだ。
…多分私には、他の人が持っているであろう「熱意」というものが、存在しないのかもしれない。ある教え子にも、こう言われた事があった。「先生はいつも冷めている」。どうやらその子はある意味では、私の「本心」を見抜いていたようだ。
…その子は今、何をしているのだろう。再び会いたいと思った事、そして「教える事以外に」興味を持ったのは多分、生まれて初めてかもしれない。
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