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映の部屋で観た映画は、思ったよりも感動的で、面白かった。
人気作ではなかったものの、前から少し気になってはいたので、忘れる前に観られて良かった。そう思い、わざわざ観せてくれた彼にお礼を言うと、俺の借りるDVDが彼の好きなジャンルとほとんど同じだったようで、一度話してみたかったと言われた。だがいざ話す機会を作ってみたところで、うまく話せないことに悔しさと恥ずかしさを覚え逃げた。でもまた会えたから、頑張ってみたとのこと。
いや強引すぎだろ。普通知らないやつを家まで連れて来るか?
そう言ったら、悪かったと、同じマンションだからいいかと思ったと言っていたが、それでも映は時々強引な気がする。根は優しいのだが、言葉が少ない。
それから映とは何度か一緒に借りたDVDを観て、すぐに友人になった。彼は基本的に夜しか家にいないようで、アルバイトをいくつか掛け持ちしているとのことだった。
「おい映、ティッシュ。ほら。そんなに泣くならハンカチのほうがいいか?」
今日観たものは、やっぱり泣けた。俺は2度目だが、何度観ても泣くなこれは。映なんかティッシュ箱半分くらい使ってる。俺もその半分くらいは使ったので、ティッシュ箱の中身はあと少ししかない。ハンカチは今思い出したので、ポケットから出したものをそのまま映に渡す。
「あんま強く拭くなよ、赤くなるぞ」
首を縦に振ってはいるが、涙は止まらないままだ。映画は終わったが、映はしばらくハンカチに顔を埋めていた。映が動かないままなので、冷凍庫に氷と、タンスからタオルを取り出す。
「映、これで目冷やせ」
氷をタオルで包んで、映に渡す。俺も同じようにして、目にあてる。冷たくて気持ちが良い。
しばらくお互い無言でいたが、だんだん眠気が襲ってきたので、映に声を掛ける。
「映」
「……ん」
「俺もう眠いんだけど、どうする?」
テーブルの上の飲み物を片付け、歯を磨きつつ聞く。映は頷くだけだった。
「泊まってく?」
頷きかけたが、少し悩んだらしい。俺は基本的に人を泊めない。人の家に泊まることはあるが、基本は断る。誰かがいると、しっかり眠れないのだ。
映もなんとなくそれがわかっているからか、泊まったことはない。
少しして、映がゆっくりと立ち上がって、玄関へと歩いて行った。帰るらしい。
おやすみと声をかけると、小さく、おやすみと返してくれた。
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