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今日は快晴だ。
どうしてか冬の日は、空が青いほど寒い気がする。
窓を開けると、吐く息が白くなるほどの冷えた空気が室内へ入ってくる。
ストーブをつけているわけではないから、部屋は余計に冷えるばかりだ。
「おはよう!」
だというのに、朝イチで窓を叩いて俺を起こしたこの男は、笑顔でそう言う。
「……おはよう。ほら、入れよ。ストーブつけといて」
毎度のことなので、慣れた。こいつも慣れた足取りで部屋に入り、ストーブをつけに行く。
着替えて顔を洗って、部屋に戻ると、男はストーブの前で全身を温めて、眠そうにしていた。近くへ行って、同じようにストーブで全身を温めるために座ると、男は俺を見るなり、童顔に笑顔を浮かべた。
「今日もオレが1番だよね?」
「こんな朝イチで俺に会いに来る奴なんて、お前くらいしかいねぇよ」
そう言うと、ぎゅっと抱きしめられた。
なんか、小型犬に懐かれた気分だ。
男は、俺より頭1つ分小さくて、年も俺より5歳ほど下だ。弟がいたら、こんな感じなのだろうか。
「腹減ったな。ほらどけ、飯作るから」
「わーい!アサトさんのご飯!」
台所へ向かうと、コンコン、と部屋の扉から音が聞こえた。
「あ!オレ出る!」
扉へ向かう俺より先に扉の前に立ったそいつに、またかと思いながら頭を撫でてやる。
「待て待て。いいから、お前はストーブで温まってろ。いつからいたのか知らないが、さっき抱きついて来た時、身体冷えてたぞ」
そう言うと、渋々ながらストーブの前へ戻って行く。じっとこちらを見ながら。
「はいはいどちらさん?」
扉を少し開けて訪問者を確かめると、俺より少し高い目線で、茶色の瞳がこちらを見ていた。
「おはようございます。あの、朝ご飯、多めに作りすぎてしまって。一緒にどうですか?」
隣に住んでいる男だった。優し気な顔に、気弱そうな声音が、がっしりした身体には少し違和感のある男だ。
すぐに扉を開けて、中へ招き入れる。
「おはよう。ありがたく頂こうかな。どうぞ。あ、伊佐緒(いさお)いるんだ。どれくらいある?」
その男が持って来たバスケットの中を見ると、たくさんのサンドイッチが入っていた。男3人分には、少し足りないか。
「うーん、昨日の残りがあるから、それで足りるかな」
そうして3人で、ストーブの近くにあるテーブルで、朝飯を食べた。
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