1.新しい日々を生きてみる

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「はー、美味しかったよ。ありがとな」 サンドイッチはジャムから肉まで、具材は様々で、そのどれもが美味しかった。この人は本当に料理が上手い。にこにこと微笑んだまま、あなたには負けますなんて言われたって、苦笑いしか出てこない。 「伊佐緒もほら、お礼」 ずっと無言で、でも食べる手は止まっていなかった伊佐緒にそう言うと、伊佐緒は、むすっとした顔のまま、どうもと呟いた。 「それにしても、伊佐緒くんはいつも早いですね。若いっていうのはこういうことでしょうか……」 眉間にしわを寄せてそんなことを言うものだから、思わず笑ってしまった。 「あんた俺とそんなに年変わらないだろ。やめろよ、俺まで年寄りみたい」 そういう意味じゃないですと慌てて首を振るが、そんなことはわかっている。 伊佐緒は、いつからだったか、今日みたいに朝早くに俺に会いに来るようになった。決まって、俺が1番だよね、と言って。 最初は疑問だったが、聞いても答えてはくれないので、諦めた。 そのうち俺もそれが習慣になって、朝は伊佐緒におはようと、今日もお前が1番だったと伝える毎日になった。 隣に住んでいるというだけで、伊佐緒が早起きなのか、ずっと起きているのか、そこまではわからないが、それにしても、朝に聞く声が輝いていて、ああ若いな、とふと思うときがある。 この人が言っているのはたぶん、そういうことだろう。 そんなことを考えているうちに、昨日の残りがのっていた皿が台所に持っていかれて、伊佐緒に洗われていた。こういうことをさらっとやってくれるから、実は助かっているなんてそうそう言えない。こいつを調子に乗らせると、俺のプライベートがなくなっていくのは、最近気づいたことだ。 皿洗いから洗濯、掃除まで、褒めたらやってしまうのだから、この部屋にはこいつの知らないところなんてないんじゃないかとふと思ったのだった。 「アサトさん、冷蔵庫ほとんど空なんだけど、今日のお昼どうするの?」 ほら今だって、勝手に冷蔵庫を開けてそんなことを言う。 いや、別にいいけど。気にしてないけど。 「んー、どうすっかなあ。梅一(うめかず)さんは?」 また3人で食べるなら、一緒に買って作ったほうが、俺的にお得だ。 「旭人(あさと)くんと伊佐緒くんが良いなら、ぜひ一緒に食べたいです」 照れくさそうに笑うから、ちょっときゅんとしたのは黙っていよう。
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