2.要らなくなったものを捨ててみる

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「今日は何の映画?」 隣に座り、お土産のお菓子を皿に移しながら問うと、動物。と返ってきた。 「え、泣ける系?」 「ん」 映(えい)はあまり喋りたがらない。行動で示してくる。今も、DVDのパッケージを投げてきた。乱暴な。 見ると、犬とおじいさんが大きく描かれていた。ん?これ知ってるぞ。 「映、俺これ観たことある」 「オレはない」 ええー。まじか。これかなり有名だぞ。ハンカチ必須のやつだぞ。 そう思いながら映を見ると、ちら、とこちらを見た。 オレはない。だから観る。 そう言っていた。たぶん。 そうこうしているうちに映画は始まった。 お菓子をつまみながら、冷蔵庫から取ってきた日本酒を飲む。 映とはDVDショップで出会った。それよりも前に、マンションでたまに見かけはしていたが。いつもフードを被っているので、明るい住人の多いこのマンションでは割と目立っていたのだ。それでも挨拶をするような仲でもなく、すれ違ったところで彼は俯いているので、声をかけることもなかった。ところが、仕事の帰りに寄ったDVDショップで気になり、借りようとしたときに伸ばした手がぶつかったのは、まさかの彼だった。その時は俺が譲って終わったのだが、翌日も同じことが起こった。しかも、その次の日も。さすがに偶然ではないだろうと思い声をかけたところ。 彼は顔を赤くして、うるせえと怒鳴って去ってしまったのだ。そんな反応をされたのは初めてで、何これラブコメ?と脳内で呟いてしまったが、さすがにもうこんなことはないだろうと思い、違う日にまた寄ると、彼が待っていた。 この間は悪かった。そう言って、この間借りようとしたDVDを渡された。これには驚いて固まっていると、何を勘違いしたのか、そのDVDをまた借りて、俺の手を引っ張ってマンションへと向かったのだ。それはもうすごい速さで、俺が口を挟む余地もなく。そうして彼の部屋に通されて、ん、と渡されたのは、綺麗なケーキだった。 いやさすがに悪いと返すと、オレが作ったやつだから。と言い返されて、食べてけとソファに座らされた。借りてきたDVDを再生して、ついでに観てけばと言う。ケーキを食べ、その映画を観つつ思った。何でこんなことになってんだ?
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