第1章 平成vamp

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第1章 平成vamp

 今から僕が語る物語は、そう、まるで嘘のような本当にあった信じがたい話である。  カメラが趣味であった僕は数年ぶりに東京に大雪が降ると知り、都内のあるビルの屋上に定点観測カメラを設置して、雪景色に変わっていく東京の街の風景を撮影しようと考えた。  だれもがすることではないが、カメラが好きな奴ならだれでも思いつき、そしてだれでもがやらないが、必ずだれかはやるだろうという、そんな程度なことに、どうしてあんな恐ろしい目に合わなければならなかったのか、僕にはわからない。  ただ一つ言えることは、そこに至るまでのここ数日の出来事は、どうしようもなく、この場所に続いていたということ。  抗うことのできない運命を引き起こしたきっかけは、滝川凛という、1人の少女、いや二十歳の女性に少女というのは、どうかと思うが、白く、気高く、美しく、どうしようもなく僕の視線を集めてしまう、その存在に気付いてしまったときから、こうなることは、決まっていたのかもしれない。  では、語ろうではないか。  僕が負った心の傷を、どうやって癒そうとしたのかという、傷の物語を――それは激しく血を流しながら、狂気と虚構と歴史と伝説が織りなす、吸血鬼の物語である。  2018年2月22日 東京に4年ぶりの大雪が降ったその日何が起きたのかを、まずは語ろう。
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