第2章 吸血鬼カーミラ

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第2章 吸血鬼カーミラ

 ここまでの話、要約すると、僕は中年吸血鬼とLINEをする関係になった――ということになる。  にわかに信じがたい話だろうけれど、そのために僕は死にかけて、命を拾った。拾った命は、もとのままというわけではなく、機能的にはある制限がかけられ、それゆえに、機能的にはあるリミッターを解除した存在になりうる。  つまり太陽の陽射しをさけ、闇に行き、超人的な回復力を得る。そのためには人の生き血を吸わなければならない。  もちろん、そんな生き方はゴメンだ。  そうならないためにも、僕は見知らぬ女吸血鬼、カーミラを探す羽目になったのだが、僕にはなんのことだかさっぱりわからなかった。  そもそも吸血鬼の存在は、空想の世界の話であり、当たり前にドラキュラだろうがカーミラであろうが、存在するはずがないのだ。  しかし、存在するはずのない伝説の吸血鬼が目の前に現れ、僕は生き血を吸われ、その家来にさせられてしまった。  そんなわけで、僕はこの時点ですべてを受け入れる覚悟を決めたのだと思う。すごく説明がしにくいが、異世界の扉を開いてしまった以上、そこでは常識が通じないという、僕やおおらくあの滝川凛も嫌いであろう、ファンタジックな世界はライトであれダークであれ、踏み入れてしまった以上、その掟には抗えないということだ。  では、このとんでもない条件下での、とんでもない人探しがどんな顛末になったのかを、お話しよう。  それは笑えないくらい泣けてくる痛みの話。
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