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第3章 平成ゆきおんな
ダリオとカーミラを名乗った女吸血鬼ローラの話になんら同情もしないし、大人同士のいざこざに巻き込まれた僕としては、もらい事故のような話である。
笑って聴いてくれれば、僕としては気が晴れる。
しかし、僕にはまだ、僕が負った傷の話が残っている。中年ヴァンパイアが本当は童貞だったかどうかなんてどうでもいい。
恋心を寄せた相手に犯罪者呼ばわりをされた僕は、吸血鬼でなくてもお天道様を拝みながら、街を歩くことはできやしないのだから、どうせなら、吸血鬼になって、あわよくば彼女を無理やりに自分の物にしてやろうかと、陰鬱で屈折した欲望を実現するための手段を得た。
それをどう行使するか、しないのかは、そのときまるで考えてはいなかったのだけれども、僕は吸血鬼の存在をしってしまった以上、純粋のもっとそれを知りたくなっただけで、実際にヴァンパイア―ハンターになろうなどとは、まるで望んではいなかったのであるが。
さて、奇縁から中年ヴァンパイア、ダリオと主従関係を結んだ僕が、その後、どんな顛末を経て、こうしてお話をしているのか
いよいよ物語は、完結に向かうわけだけれども、その前に、やはり語っておかなければならないのは、滝川凛についてだろう。
話は少し前に戻ることになる。時間が前後してしまうことを許してほしい。
彼女との出会いから話しするとしよう。
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