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第1話 月の下での出会いⅠ
城内を人が慌ただしく駆ける足音がする。その足音が私の部屋へ近づいてくる。不穏な予感がする。私は思わず部屋のドアを開けた。するとメイドのラバが息を切らし、険しい顔をして立っていた。
「シャ、シャルワ様、王の容態が急変しました…」
・・・お父様!!私は途端に部屋から飛び出した。父は数カ月前から病気で床に伏せていた。いつかその日が来てしまうのかと覚悟はしていたけど...
父の部屋へ入ると、医師や家臣、母がベッドを取り囲んでいた。私は父の顔を覗き込んだ。かすかな呼吸は聞こえる。ほとんど瞑られた目が私の方へ向いた。
「シャ…ルワ」
絞り出すような父の声だった。
「お父様…」
握りしめた手は冷たい。
「どうか…幸せに…」
わずかに笑んだ、その言葉が最後だった。そっと目を閉じた父の顔はとても安らかだった。私と母は抱き合いながら声を出して泣いた。
その後は眠ることもできず、バルコニーから空を見上げていた。父はあの空の彼方へ召された。黄金に輝く下弦の月に吸い込まれるように眺めていた。
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