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第2話 月の下での出会いⅡ
「では大切な父上の魂をエデンに帰還させます」
クラークはマントを翻し、上へと舞い上がろうとした。
「待って」
私は思わずバルコニーの柵から身を乗り出し、マントの裾を引っ張っていた。
「はい!?」
そんな突飛な私の行動にクラークは戸惑う顔をした。
「あの、また会える?」
目を丸くし、じっと私を見る。きっと驚かせた。
「面白いことを言う姫様だ。そんなこと言われたこともない。俺は死神だよ?地上へ降りるのは死期が近い人間を迎えに来る時だけ。それも担当があるから約束はできない」
「じゃあ私、あなたを見かけたら声をかけるわ」
「はぁ・・・」
「クラーク、お父様をよろしくお願いします」
クラークはこくっと頷き、ゆっくりとした速度から徐々に速さを増し、下弦の月に向かい舞い上がり、徐々に月に吸い込まれていく。その黒いマントがなびく姿が完全に見えなくなるまで、私は夜空を見上げていた。
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