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数日後、父を教会内の墓地へ埋葬するため馬車へ乗り込んだ。
私、母、ロディ王子、叔父と一緒だった。
「シャルワ、戴冠式の日程を決めないとね」
そう言った母の顔には疲労がみえている。父の死後、慌ただしい日が続いている。
「そうね。まだ心の整理がついていないままだけど」
いつか自分がその座に就くことは子供の頃からわかってはいた。それはまだ遠い日のことだと思っていた。いきなり現実味を帯びてきて、私は恐怖と大きな不安を抱えている。でも、この国の王をいつまでも不在にしておくわけにはいかない。
その時、叔父が鼻で笑った。
「こんなお嬢ちゃんに務まるのかね。国の頭が」
叔父は父の弟。昔から私には “子供だ” “女だから” とういうような言葉を浴びせる。
私が国を継ぐことが面白くないのだろう。私がいなかったら叔父が国王なのだから。
「姫を侮辱しないでいただきたい。私と一緒に力を合わせていきます」
ロディ王子が力強く言った。
ふんっと鼻から息を吐き、叔父は馬車の外へ視線をやった。
「2人の結婚式は戴冠式を終えてしばらくしてからかしら。あなた達の気持ちは決まっているのでしょ?」
母が問う。
「はい」
王子は即答した。私達はフィアンセとなってまだ4カ月。プロポーズはまだ受けてはいない。王子は紳士で優しく、私を大切に想ってくれているのもわかる。
だけど...
父の墓には立派な墓石とたくさんの花に囲まれた。
埋葬された父への祈りを込めて手を組み、気持ち良く晴れた青空を見上げた。
その時、黒くなびくマントを木陰から垣間見た気がした。
「あっ・・・」
私は思わず声をもらした。
クラーク!?
足は自然と彼の姿を探しに行っていた。
「姫?」
墓地を不自然に彷徨う私の後をロディ王子がついて来た。
「どうしましたか?」
「ごめんない。父に似た姿を見た気がして」
途端に嘘をついた。
そしてクラークに心奪われいる自分に気が付いた。
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