第4話 戴冠式の日に

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第4話 戴冠式の日に

バルコニーへ出て、空を見上げ、大きく深呼吸した。青い空に白い下弦の月が浮かんでいる。クラークと初めて会った日も下弦の月の日、この場所だった。あの墓地で見た姿は私の会いたい気持ちが見せた幻だったのだろうか。 もしかしたら、もう会えないのかもしれない。でも会いたい・・・。クラークに。 こんな日に私は何を想っているのだろう。 コンコンとドアをノックする音がした。 「シャルワ様、入ります」 メイドのラバが白の壮麗なドレスを持って入ってきた。 「そろそろお仕度しましょうね」 今日はソルペック国の戴冠式。私が女王となる日。 「シャルワ様、立派になられましたね。私は18年前の生まれた時から知っていますから、こんなに立派になられて。感慨深いのと同時に大変嬉しく思います」 ラバが鏡台を前に私の髪を結いながら語る。 「私はいまだに国の継承者となることに自信などないわ。不安だらけなの。正直言うと使命感しかないわ」 周りに支えてくれる人達がたくさんいるのはわかっている。ずっと父を見てきたつもりでもある。国民に信頼されてきた父の偉大さを痛感する。私はそうなれるのだろうか・・・。     
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