7/7
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 佑樹の肩が大きく動く。私は寄りかかるのをやめて、佑樹の顔を見る。目と目が合う。心が溶けてしまいそうだ。  あの日こっそりと見た手紙。あれはあのアイドルへの手紙だった。送ることのない手紙。あのアイドルを思う気持ちが綴られたあの手紙は、恋する相手へ書く手紙のようだった。叶わない恋を机の中に隠して、私とこうして話しているなんて。秘めた思いを自分の心にしまい込んで、こうして私と肩を寄せ合うなんて。  私のことだけを見てよ。私を抱きしめてよ。そうじゃなきゃ、私はあなたにチョコを渡す勇気がない。  この歌声が、私と佑樹を繋いでいて、隔てている。いつの間にか繋いだ手が震える。佑樹を見つめる目から涙が零れそうになる。  私を見つめる佑樹の目には、私の遺伝子の半分しか見えてないの?もっと私をほんとうに愛してよ。  ねえ、私のママに、恋なんかしないでよ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!