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「今時手作りって」
「は?」
「知らない奴の手作りとか怖いじゃん。よくそんなもの渡す気になったよねあんた」
「ひっ」
大きな目で睨みつけられ鋭い敵意に縮こまるが、雄陽が割って入った。
「気持ちがこもってるもんはありがてえよ。お前が持ってるそれと何か違うわけ?」
にっと不敵な笑みを浮かべて彼は続ける。
「それに、こいつは俺の大事な幼馴染だから知らねえ奴でもねえし、人を平気で傷つける奴のほうが俺は怖いわ」
「なんっ、な……あたしのは、そんな粗末なものとは違って」
「いらね。こいつがくれる物以外は」
迷いのない言葉にかっと頬を怒りに染めた少女は雄陽の足を踏みつけて「ばーか!!」と捨て台詞を吐いて走り去ってしまう。
経験したこともないいわゆる修羅場に顔面蒼白になった幼馴染の頬をきゅっと抓り、雄陽はまたがははと笑った。
「ほれ、これお前のだろ?」
赤い箱を受け取って頷けば、雄陽は軽く開けた口をちょいちょいと指で示している。
入れろと? そこに? これを? わたしが?
「嫌です」
「嫌じゃねえだろ早くしろ」
「無理です!」
「作ったんだから最後まで責任持って食わせろ」
押し問答を繰り返し、結局負けたのは彼女の方で。
粉々になってしまったクッキーの中で一番形の良いものを選んで雄陽の口に運ぶ。
身体と同じように大きな口が指ごと食らおうとするのを瞬時に避け、ドキドキと高鳴る胸で彼を覗き込む。
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