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「霧島さんは分かったのかよっ」
強気な口調で尋ねたが、玉砕される準備はできていた。
「分かったよー」
霧島さんは僕よりも頭がいい。
彼女は、数学ができないからとか、消極的な理由で文系を選んだわけじゃない。いろいろ自分で考えてた結果、性に合ってないとやめたんだ。彼女はいつでも能動的で、僕とは違う。
「……、分かってても性には合ってないんだろ」
「合ってない合ってない。でも楽しかったなー」
「授業が楽しいのか」
「空太が横にいるとさー、楽しいんだよー」
『放課後の寄り道は?』
『なんだよ? 授業中に』
『いいから、答えて』
『駄菓子屋』
『昨日と一緒じゃん。けちっ』
『じゃあ、コロッケ屋』
『いいねー。あったまるね!』
そんなことを書いた紙が授業中渡されるものだから、集中なんてできなかった。そんな筆談をしたのは、今日が初めてだった。いつも休憩時間になるまで干渉はして来ないのに。きっと、性に合わない理科系科目を受けているからだ。きっとそうだろう。
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