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異変
玄関のドアを開ける。おかえりなさい。母の声が響いた。
それに、そっけなく答える。家はあまり好きじゃない。僕に理系を選ばせた家だ。これが反抗期というやつか。
「ご飯が出来てるわよ」
母の声が居間から聞こえる。
鞄を玄関に乱暴に置いた。靴を脱いで蒸れた靴下でフローリングの床を踏みしめる。
居間に入ると、テレビがニュースを垂れ流しにしていた。僕のご飯が置かれた席の向かいでは、父が新聞を開いていた。
「テストはいつ帰って来るんだ?」
父は僕の成績を気にしていた。理系科目がそこまで得意ではない。かと言って文系科目もさほどでもない。どちらにも突出していない成績と、これからは理系の時代だと口々に言う文系出身の父親。これが僕を理系に進ませた社会だ。
「今週末」
「理科系科目が嫌いなら文系に行ってもいいが、後悔するぞ」
素直に理系に行けと言えばいいのに。
心の中でぼそりと呟く。そういう遠回しな言動が鬱陶しい。
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