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それは自分の意志の弱さのせい。僕は霧島さんのように強くなれない。うやむやな返事をして、いただきますと呟いた。
ハンバーグを口に運ぶ。肉が柔らかくて美味しい。でも口には出さず、黙って咀嚼した。ワイドショーの合間を、父の新聞をめくる音が割って入る。
蝙蝠が羽ばたくように、ばさりばさり。
ニュースが聞こえない。眉間にしわを寄せ、耳を澄ませて音を搾り取る。
“サスペクトパシー”
耳慣れないカタカナ語が聞こえた。キャスターの説明を聞くに流行の病らしい。ここのところ、新種の流行病が多く取り上げられている。
そういう病気の中に、南極や北極の氷床に埋まっていたものがあって、それはとっくに流行していても政府が隠していた。オカルトが好きな霧島さんはたまにそんなことを言う。
もちろん本人も本気では信じていない。ただそういう陰謀論は、好きだと。
コメンテーターの中には、精神科医がいた。感染性の病気のニュースに精神科医がコメントするのは、場違いな気がしていた。でもそれは、僕の無知による浅はかな思い違いだった。
「今回は、数週間前から流行している感染経路不明の感染性精神疾患、サスペクトパシーについてですが――」
感染性精神疾患。
無理矢理つなげたかのような奇妙な言葉が、鼓膜にべったりと貼りついた。
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