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急いで戻らなければ。そう思うと同時に、アスファルトに倒れるわたしがうーんと唸った。
「あ、起きそうだわ。わたし」
わたしは泳ぐようにして、地表を目指した。
ヒサオさんが後ろから声をかけてくる。
「……ヨネ。エンディングノートは自分の希望を書くものだぞ。次のタイミングまでに、ちゃんと書き直した方がいいんじゃないのか」
倒れる自分の体の元に到着する。わたしは上空を見上げた。
ヒサオさんは、どこか照れ臭そうな顔をしていた。
「あら、わたしのノート見てたの? ……そうね。時間ができたら書き直すわ。でも、そんな時間もないかもしれないわね。楽しい人生って、あっという間だから」
ヒサオさんはふっと笑う。わたしも笑い返した。
わたしは倒れる自分の体に滑り込んだ。
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