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わたしは無事、生還した。
なんとか帰ってきた我が家はやはり寒かったが、なんだか温かな気持ちになった。
「もう、驚かさないでよ。あたかも今日死ぬかのような顔をしていたから、本当に死んだかと思ったじゃない」
キョウコは家に戻っても、ずっと愚痴を言い続けていた。
でも、きっとわたしの責任なのだ。死ぬと言われて死ぬ気満々だったから気絶してしまったのだ。内心、大好きなポチに殺されるなら本望と思ってしまったのかもしれない。
わたしは何度目かの謝罪をした。
「ごめんなさい。ところでキョウコ、わたしやっぱり豆乳を買ってくるわ。今夜必要なのよ」
「まだそれ言うの? ……いいわ、私が買ってきてあげる」
キョウコはため息をつくと、コートを羽織り外へ出ていった。
わたしは竹田さんを想い、悲しみに暮れながら箪笥の中の喪服を確認した。
そしてふと思い出し、エンディングノートを持ち仏間へ向かう。
「……ヒサオさん。わたしの『特別な日』はもう少し先みたいだけど、元気で待っていてね」
ノートをぱらりとめくる。それを一通り読み返すと、ヒサオさんの遺影の側に置いた。
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