エンディングノート

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  『ヒサオさんへ。  天国って、どんな仕組みなのかしら。わたしが死んでもお空でちゃんと会えるか分からないから、ここにメッセージを残しておくわ。もし会えなかったらこのノートを読んでちょうだいね。  わたしたちの大切な一人娘、キョウコは立派に育ちました。  もう娘って程の歳じゃないけれどね。先週のあなたの命日に、思い出の横浜に行くと言ったらついてきてくれました。「足腰も弱いし、一人じゃ心配だから」って言っていたけど、きっとわたしと一緒にあなたの冥福を祈りたかったのね。優しい子だわ。  今はハヤトさんと喧嘩中だけれど、すぐ仲直りできそうよ。  わたしたちもよく喧嘩したわね。思えば、わたしたちも気が合う方じゃなかったわね。わたしは何でも許してあげたように見せかけていたけれど、競馬でキョウコの大学入学費をスった時には刺し殺してやろうと思ったわ。  でも、あれからあなたはギャンブルを程々にするようにしてくれた。時にはストレス解消も大事だものね。そんなわたしたちのやり取りを見てたからかしら、キョウコはわたしたちみたいな夫婦になりたいって言ってくれたわ。あなたのギャンブル癖もたまには役に立つわね。  あなたが、わたしの『特別な日』を教えてくれてよかった。  おかげでもう、何も思い残すことはないわ。  ちゃんと天国で会えたら、ずっと一緒にいられるわね。実はね、あなたがいつも夢枕に立ってくれるのがうれしかったのよ。本当は寂しかったの。ずっと気遣って、わたしの側にいてくれてありがとう。  やっぱりさすがは、ヒサオさんだわ。  ヨネ』  
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