エンディングノート

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   布団をたたみ、部屋着に着替えた。戸棚の上の筆立てからボールペンを取り出す。  座卓の前に正座をし、ノートを開いた。  さて、何から書こうかしら。まずお葬式に来てほしい友人の連絡先かしら。実家のある富山の友達、上京してから入社したデパートの元同僚、近所の木村さん、鈴木さん、渡辺さん。今入院しているらしいお隣の竹田さんは無理かしら。随分と仲良くさせていただいたのにご挨拶もできないなんて悲しいわね。そういえば、白菜と豆乳のスープのレシピを教えてもらったんだったわ。伺ったのはもう一年くらい前なのに試すのを忘れていた。今夜作ってみようかしら。そう、ちょうど白菜を昨日鈴木さんから頂いたんだったわ。あら、キョウコは白菜苦手だったかしら? いえ、違うわ。苦手なのはエリンギね。  そんなことを考えていると、障子を透かして光が差し込んできた。  時計を見ると、もう七時だ。二時間が経っている。歳を取ると時間の進みが異常に早い。  友人の連絡先を書くにしても、この調子だと五人目ぐらいを書いたところでお迎えが来てしまうかもしれない。お葬式で流すBGMについても、本当は候補があと八曲あるので決めるのに時間がかかりそうだ。  残された時間は僅か。 〝自分の気になることから書いていったらいいみたいね〟  死ぬにあたっての準備。  わたしの一番気になることって、何かしら……。  わたしはまた一時間程悩んだ末、キョウコの元へと向かった。  キョウコはまだ寝ていた。 「キョウコ、起きて。今日横浜に行きましょうよ。お仕事はお休みなんでしょう?」 「……え? また横浜? 先週行ったばかりでしょ。……しかもまだ八時じゃない。休日くらいゆっくりさせてよ」 「急いでるの。今日は特別なのよ」  わたしはキョウコを無理やり起こすと、準備に取り掛からせた。  
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