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「ヨネよ、起きるのだ。今日は特別な日となるぞ」
そっと目を開けると、死んだヒサオさんがわたしを見下ろしているのに気が付いた。
わたしはヒサオさんと目が合うと、またそっと目を閉じた。
体感的に、時刻はまだ夜十一時といったところだったからだ。歳を取り寝が浅くなっていたわたしは、夢の中と言えども睡眠を邪魔されるのがいやだった。どうしても日が昇る前に目が覚めてしまうから、もう少し真剣に寝かせてほしいのだ。
「……なんですかヒサオさん、またわたしの夢枕に立って。昨日も競馬を当てたとかなんとかで会いに来たではないですか。そんなに天国というところは退屈なのですか」
「まあな。やはりドスコイコノヤローはいい馬だ。最高の逃げ馬だと思う。しかし天国には下界よりも競馬好きが少なくてな、友達を募集……いや、それよりも今日は大事な知らせがある」
わたしは目を開けた。
そこには、真剣な表情をしたヒサオさんの顔があった。
「あまりに退屈で、昨日天使たちの定例ミーティングを盗み見していたのだがな。そこで聞いてしまったのだ。ヨネ。お前は今日死ぬらしい」
「まあ」
わたしは驚いた。
人間の生死とは、天使が決めていたのだ。
どちらかというと、そういうことをするのは死神や悪魔のイメージだった。天国には天使がおり、定期的に会議を行い人の命を刈り取っていたのだ。知らなかった。今日は日曜日だから、毎週土曜日に殺す人間を決めているのだろうか。天国の仕組みにとても興味が出てきた。
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