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僕の恋は突然始まった。
恋といっても、片想いだったのだが。
相手は高校の世界史の先生だった。
年齢不詳。
肩までかかる艶やかなストレートの黒髪。
キメの細かい白い肌。
いつも赤い口紅をさし、厚くも薄くもない唇。
切れ長の目。
人によって好みは分かれるだろうけど、紛れもない美人だった。
小柄で華奢な体型だが、背筋をピンと伸ばして教室に入って来る姿には威厳さえ感じられた。
山岡真由美先生といった。
僕の一目惚れだった。
入学してまだ間もないある日、初めての世界史の授業を受けた途端に、僕は恋に落ちたのだ。
僕のことを話しておこう。
僕は秋村直哉。
母方の祖父母との三人暮らし。
幼い頃、両親を亡くして、祖父母に育てられた。
僕のことを不憫に思い、猫可愛がりする祖父と、その反対にやや厳しい祖母。
親はいなくてもバランス良く育ったと思う。
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