部活

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部活

僕の高校生活は、山岡先生への一目惚れで始まったようなものだったけれど、概ね順調だった。 成績はまずまずだったし、何よりも、山岡先生が顧問を務める部活に参加できたことが僕の原動力になった。 「映画研究会」という部活。 特に映画好きという訳ではなかったのだけど、先生目当てで入った。 進学校ということもあって、一部を除いて生徒はそれほど部活には熱心ではなかったし、先生たちも緩やかにやっていた。 「映画研究会」の活動は、至ってのんびりしたもので、週二回だけ。先ずメンバーがチョイスしてレンタルした作品を教室で鑑賞して、次の回には、その感想を語り合う。 ジャンルは多岐にわたっていた。但し、ホラー、スプラッター、R指定、一部PG指定は抜き。 部活に参加する内、僕もだんだんと映画好きになっていった。 ある日、先生と二人きりで話せるチャンスに恵まれた。チャンスというより、僕が二人きりになれるように持っていったのだけど。 「あの、山岡先生、ちょっと相談が」 部活終了後、先生を呼び止めた。 「相談?どんな相談かな?秋村君」 「いや……。僕、来週、初めて作品選んで来るんですけど、どんなのがいいのかなって……」 「どんなのがって、規定に触れなければ、何でもいいのよ。既に鑑賞済みで気に入った作品があれば、それもいいし、まだ観ていなくて観たいものでもいいし」 先生はサバサバした表情で答える。 「ぼ、僕、映画、興味はあるんですけど、あんまり詳しいとは言えないんですよね。何か先生お薦めのもんとかあったら、教えてほしくて……」 適当な口実がスラスラと口をついて出る。 「お薦め作品ねえ……。沢山あるからなあ」 「な、何か、名作っつうか、昔ので感動的なのとかないっすかね?えっと……ナントカ安二郎でしたっけ?」 二度目の部活の時に配られたメンバーそれぞれの好きな映画が載ったプリントの中身を思い出して適当なことを言ってしまった。 「ああ、小津安二郎か。小津作品は名作揃いだからね。ふーん。取り敢えず『東京物語』なんかどうかな?」 先生のその一言で、僕は早速学校の帰りに小津安二郎監督の『東京物語』をレンタルしようと決めた。 レンタルビデオ屋では、すぐに『東京物語』を見つけられた。 正直、『東京物語』なんてどうでも良かった。 先生と二人きりで話せたことが僕の胸を高鳴らせた。とにかく先生と近づきたい。
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