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家族はみんな出掛けたですって?あなた、寂しくないの?平気ですって?なんてことかしら、お腹もすいたでしょ、喉も乾いたでしょ、まるで骨じゃないか。
ああ、もう骨になっていたわね。
誰にも気づかれないまま、声もかけられないまま、そっとしずかに命を終えて、狙ってきたケモノに食べられ、骨は風にさらされ砕けて、サレコウベだけになったのね。
涙も流せないなんて、こんな小さくかわいい子が、なんてあわれなんでしょう。
あらごめんなさい、あたくしばかりしゃべってしまったわ。なにしろ、誰かと出会うなんて久しぶりなんですもの、そうね、200年ぶりかしら。
お姉さんだあれ?ですって?
まあ、お姉さんなんて呼んでくれるの?どこでそんなお世辞を覚えたかしら、正直な子だこと。
真珠みたいに白く輝くこの肌に、珊瑚みたいに紅い瞳、夜みたいに黒く長い髪に、海のように青い服をしたあたくしが、お姉さんに見えるのね。
がらんどうになったマナコにも、わかるものがあるのね。
いい子には教えてあげる。
あたくしは、砂山に住む魔女よ。きょうは遠くでお茶会があって、砂で作った馬に乗ってここまできたわ。
乾いた砂しかない場所だから、せめて自分はきれいにしようと、こうして色を纏っているというわけよ。
いい加減シンジュク、イケブクロ、ロッポンギとかいう場所に引っ越しなさいって仲間は言うわ。華やかで、悲しみや妬みや怒りがたくさん転がっている、楽しいところらしいわよ。
でもね、あたくしはあまり明るい夜がある場所だと、頭がいたくなってくるの。だからずっと砂山、でひとりっきりで暮らしているの。夜は暗くて、秘密めいた時間じゃなくちゃいけないわ。
行くところはないんでしょう?
サレコウベちゃん、かわいい、かわいそうな、いい子のサレコウベちゃん。
よろしければ、あたくしとおしゃべりしながら暮らさない?夜はしずかにお茶を飲んで、昼間はお菓子を作って、お気楽にいきましょうよ。
あらまあ、歌っているのね。
じゃあ決まりだわ、よろしくね。
砂山にある、砂でできたおうちへ、砂の馬に乗って帰りましょう。
ああうれしい、うれしいったらありゃしない。
あたくしにもようやっと、かわいい子が来てくれたんだから。
きょうがあんたの誕生日よ。
お祝いをしましょうね。
お菓子をたくさん食べましょうね。
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