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「生きていれば良いことも悪いこともある。誰でも……。そう、こんなおばあちゃんの私でもね。私も生きるのが嫌になって命を捨てようと思ったこともあるのよ。そんなとき、私も見知らぬ人から今の話を聞いて小さなフクロウをひとつ貰った。それで私はもう一度生きてみた。そして今は、あのとき死ななくて本当によかったと思うの。だからあなたもこの先には行かないで、このまま来た道を戻りなさいな。まあ、見知らぬ人の受け売りだけどね」
女性はそう言うと、また優しく微笑んだ。
私は溢れる涙を抑えることができず、その場に崩れた。
あの日、私が向かっていたのは自殺の名所だった。
そして目的は、自らの命を終わらせることだった。
「さあ、もうここには来ないように」
あの日……
子どものように泣き崩れる私の肩にあたたかい手を置いて、あの人はそう言った。
「……ありがとうございます」
それがあのときの私が返した精一杯の言葉だった。
あの人は、我が子が汚したズボンを払うように、私の膝の汚れを叩いてくれた。
あの日……永らく忘れていた「人の優しさ」に触れた私は、
もう一度頑張ってみようと思った。
「パパ、キャッチボールしようよ」
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