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「勇太、パパは疲れてるんだから無理言っちゃダメ」
息子と妻の声で現実に引き戻され、私は家族を見る。
あれから私は妻と出会い、子にも恵まれ、小さいながらマイホームも手に入れた。
「いや大丈夫だよ。そうだ勇太、今から動物園に行くか?」
「うんっ。行く行く。やったあ」
動物園に着くと、勇太は興奮しきりで動物を見て走りまわった。
そして野鳥のエリアへにさしかかる。
「パパ見て。フクロウがいるよ」
「ああ、本当だ。……なぁ勇太、フクロウってさ……」
私はあの時に聴いたフクロウの話を勇太に聞かせた。
なぜなら、普段は休息に費やす休日をこうして勇太のために過ごしているのは、私がフクロウの話を聴いた日……
私が生きることを選んだ記念日が、いつかの年の、この日だからだ。
勇太……生きるのは楽しいか?
あのとき、あの人がいなかったら、お前もいなかったんだぞ。
あの人は今でも、訪れる人にあの話をしているだろうか……。
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