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つながり
今日は特別な日だ。
先に起きて宿題をしていた息子を見て、私は遠き日を想う。
あの日私は、目的を果たすために歩いていた。
心も脚も重かったが目的地はすぐそこだった。
目指していたのは、ある意味で有名な場所だ。
その場所に続く一本道を歩いていると一軒の民家が見えてきた。
その塀になにかが並んでいるのが見えた。
なんだろうと思いながら近づくと、そこには無数のフクロウが並んでいた。
私は不思議に思いながら立ち止まり、そのフクロウたちを見る。
すると家の中から老いた女性が出てきた。
「あ……すいません」
軽く会釈をし、私が慌ててその場を立ち去ろうとすると
「ちょっと待って」
と呼び止められた。
「これ、ひとつ持っていきなさい」
女性は柔らかな声でそう言うと、
フクロウの置物のひとつを手に取り、私に差し出した。
「あ、いえ……私は……」
「いいから、いいから」
女性は年齢にふさわしい年輪を浮かべて微笑みながら、私にフクロウを握らせる。
手には温もりを感じた。
そして女性は話を続けた。
「フクロウってね、べつの書き方をすると『不苦労』と書いたり、『福来郎』 とも書くんですよ」
私は黙って話を聞いた。
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