たとえ死んでも離さない

20/35
前へ
/360ページ
次へ
  「タイチ……怒った?」 「怒ってない。明日もトレーニングだし、早く寝よ」 「裸で寝たら風邪引く。パンツちゃんと穿いて」 「親か」 「そりゃーおまえにミルクあげたしオムツも替えたし。恩返しとして健康でいてもらわないと」 「柊が年取ったら俺がオムツ替えるんだからおあいこだろ。まだあと40年以上掛かりそうだけど」 「……………」 ずっと一緒に生きるってそーゆーことだ。柊の骨は俺が拾うんだ。 「タイチ……」 「なに」 柊は俺の背中越しの窓を凝視してる。 「雪……降ってきた」 がばっと起き上がって窓辺へすっ飛んで行く。薄闇のベランダに、確かに雪が、花弁みたいにハラハラ舞い落ちている。雪。ブラインドを全開にして、鍵に手を掛ける。 「外はダメっ。裸だし風邪引く!」 あ、そうだった。とりあえず窓が息で曇るほど近づいて空を覗く。 ────雪。 やっと。やっと、雪が降った。待ち焦がれていた季節が始まるんだ。 「いつ積もる?」 「山の上はあっという間に真っ白になる」 「キッカーにも?ハーフパイプにも?」 「うん」
/360ページ

最初のコメントを投稿しよう!

632人が本棚に入れています
本棚に追加