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喜多川柊は、俺含め、村の子供達のヒーローだった。
血縁関係はないらしいけど、俺が生まれた時から傍にいた。両親のもと、実の兄弟のように過ごした幼少期。
ハッキリ記憶があるのは6才の頃。村で開催されたスノーボード大会。
真っ白な景色。初めて見る本物のハーフパイプ。色とりどりのウェアとボード。
次々と空へ舞い上がる選手たちの中で一際目を引くその姿は、いつも見慣れたあの人じゃなかった。
どよめきと歓声、雪が溶けそうな熱気。その中で目や耳の奥がズキズキしそうなほど、俺は興奮していた。
あの人のジャンプは誰とも違う。
桁違いの高さ、滞空時間。子どもの目から見ても難度の高い技の連続。どこまでも完璧なライディング。
その日圧倒的な力を見せつけて優勝した柊さんは、ただただ輝いて見えた。
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