たとえ死んでも離さない

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  ケベック州都、ケベックシティにある西川さんの生家に招待されたのは10月下旬に入った頃だった。西川さんてカナダと日本のミックスなんだとか。色々と日本人離れした感覚の持ち主だとは思ってたけど。へ──。 「いい天気だし、軽く観光しよ~」 「寒いからヤダ」 「じゃあ柊ちゃんは家にいなよ~太一くんと2人でデートしてくる~☆」 「行く」 都会のバンクーバーとは打って変わって、ヨーロッパのような街並みの古都ケベックシティ。北米唯一の城郭都市で世界遺産。今いるここがロウアータウンで崖の上の丘に見える、なんか凄い建造物があるのがアッパータウン。そこへは後で向かうそうだけど、今……とにかく、まるで、まるで 「ハリーポッターの世界みたい……!」 「ホグズミード?ダイアゴン横丁?こんな坂ばっかりじゃないと思うけど」 なんて可愛い石畳と石造りの街。ハロウィン仕様のカラフルなお菓子屋さんやカフェ。雑貨屋さんも超可愛い……!! 「前から思ってたけど、タイチって図体はデカいのに中身は乙女だよなー」 聞こえない。俺の目はこの愛らしいスノーマンが描かれたマシュマロと、スノーマン人形の照明に釘付けだ。200カナダドルっていくら?………たっか。 「欲しいの?買お買お」 「いーよ、高いし」 「タイチが欲しがる物って鍋とか琺瑯容器とかトイレットペーパーとか生活用品ばっかり!たまには彼氏らしいもの買わせろっ」 そんな威嚇しなくても。それに生活用品ほど彼氏らしい買い物はないんじゃないのか。
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