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店から一歩出たら外は4度。朝方に降った雪が街なか至る所に積もって。明日撮影で上がる山はもう数メートルの積雪だとか。ワクワクする。
「俺、何にもお返しできないのに……何から何までありがとう」
「今からバンバン滑りまくって還元して貰うから」
「滑って飛ぶだけでお金貰っていいのかな」
「テメー俺様をディスってんのか」
「柊は飛ぶ芸術家だし。俺みたいな凡人とは訳が違う」
柊は白い息を吐きながら、上目遣いで俺を睨む。
「おまえのこと、凡人なんて思ってる奴はおまえだけだバーカ」
「バーカって」
「あの!喜多川柊さんですよね!?」
日本語……観光客かな。女の子が二人、柊に握手と、スケジュール帳を開いてサインを求めてる。森さんの言う通り柊は堂々と声を掛けられたらきちんとそれに応えるんだ。それもチョー余所行きの爽やかな笑顔で。
「あの。そちらの方も一緒に写真撮って貰っていいですか?」
俺?いや、俺はカメラマンでしょこの場合。
「ごめんなさい。このコはデビュー前だから勘弁して貰えると助かります」
「デビュー?いつするんですか?」
「まだ内緒です。日本で楽しみに待っててくれると嬉しいです」
断り文句なのに、トゲがなくなるほどの極上の笑顔。それはズルい。
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