たとえ死んでも離さない

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  カフェで甘───いカナダスイーツと苦───いコーヒーを堪能していると、東海林さんが西川さんを捕獲しにきた。どうやらまた仕事から抜け出していたようだ。でも今日は素直に連行されるみたい。まぁ、店の中で暴れる訳にも行かないか。 「葵、太一くんの荷物、先に部屋に運んどいてあげて~」 「いいですいいです!重いし!」 「崖の上に行くなら身軽な方がいいよ~。葵は力持ちだし」 「大丈夫ですよ、碓氷くん。アッパータウンからの眺め、ぜひ楽しんで来てください」 有り難くも申し訳ないながら、謹んで甘えさせて頂くことにした。西川さんは東海林さんにジャックオーランタンをねだりながら店を出て行った。つくづくお似合いのカップルだ。俺も柊とそうなりたい。 「疲れてない?」 「全然。すごく楽しい」 「良かった。じゃあ……陽があるうちに行こう」 って言いながら土産物屋さんに入ったと思ったら、そこからケーブルカーのような傾斜型エレベーターに乗せられた。 「スッゲ──!」 「感心してる間に着くぞー」 あっという間に壁の上に着くと、そこには荘厳な城がそびえ立っていた。ホントにこれぞお城!な城型ホテル、シャトー・フロンテナック。フレンチロマネスク様式と言うらしい。 本当に……こっちに来てからの何もかも全てが自分のいた環境と違いすぎて。毎日テーマパークにいるかのよう。
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