たとえ死んでも離さない

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  嘘だ。はったりだ。まるで狐につままれたみたいだ。 あの心配性の柊が、俺をひとりぼっちで置いて行くなんてあり得ない。きっとすぐに戻ってきて、頭を撫で回して。『しょーがないな』『おいで』って手を差し伸べてくれる。ここで待ってたら今に。今に……… 5分 10分 爪先がかじかんでる。息が真っ白だ。雪が……ちらつき始めた。 15分 20分 動きたいけど動けない。心がカチコチの石みたいで重い。体も重い。本当に、外国の、こんな初めて来た街に捨てて行かれるなんて思わなかった。 さっきまで見えていた景色がどんどん闇に包まれて、雪の降るロウアータウンに灯が増えて行く。綺麗なはずなのにちっとも心に響かない。何も感じない。 どうしよう……… あのホテルに行けばFlyHighの誰かに会える?それとも来た道を戻って西川さんの家になんとか辿り着く?いやいや、ここはまず電話、誰か。誰か……… スマホの履歴を開いても目が滑る。西川さんも森さんも素通りしてしまう。 柊以外の誰が来てくれても、たぶん意味がないから。今ここに柊がいないって余計に思い知らされるだけだから。
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