鳥のように飛べ

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   H県山間部、碓氷(うすい)村。  自分含め、住民の半数あまりが村と同じ苗字ってところがここの『土地柄』を物語っている気がする。  兎にも角にも田舎。村営のスノーパーク以外観光名所も特になく温泉も出ない。  唯一の目玉と呼べそうなのはスキー・スノーボード用の巨大なキッカー(ジャンプ台)。  ゲレンデを東西に二分する形で中腹から山頂へ這い上るように伸びる急な岩場、『(りゅう)()』を活用した競技仕様の構造物だ。  竜の背は昔から碓氷村の守り神とされていて、そこに手を加える事を巡って大人達のあいだでは色々あったらしい。それでも建ったって事は丸く収まったんだろうけどよく知らない。  新しい竜の背は、姿を変えてもやっぱり碓氷村の守り神。 『常設キッカー』には当初の予想よりも需要があり、国内外のプロ選手・ナショナルチームを呼び込んでくれた事で、少しずつ確実に村を潤してくれるようになったんだ。
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