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俺は瘴気のうねりに沿って身をよじり、体を回転させ、タタタンッと三度のステップで背に触れる。
青く発光した剣。
俺が裾から退くなり、ベリングが一気に魔獣へ接近する。
「指先で拭える程の悲しみ」
真横に薙いだ剣が魔獣の片目を裂く。
(さすが、リガル兵)
不意を突かれたのは魔獣だけではなかった。
不覚にも一拍遅れてベリングに追い付いた俺は、それを挽回するため全身で風を切って歪な舞を舞う。
掌をドンと背に叩き付けた反動で俺は裾から飛び降り、ベリングが足から魔獣の顎の下へ滑り込む。
「胸に抑え切れない逆心」
ベリングは片膝を立てる動作で青白い剣を突き上げる。
横から襲った魔獣の爪とベリングの剣が青い火花を散らし、剣は爪をへし折って顎に突き刺さり、脳天へ抜ける。
魔獣はドウッと倒れ、土埃の舞い上がった部屋に悠々と女帝が入って来る。
「その、奥の扉か?」
「はい」
銀製の扉を女帝が押し開く。
その部屋は円形をしており、火もないのに仄かに明るかった。
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