第1話

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大気自体が発光している様であり、床は白大理石で被われ、その真中に先端を地に埋めた剣が立っている。 「聖剣スカルバゾス。この世に斬れぬもの無き剣。それを手にした者は世界を征す」 女帝は歌う様に呟きながら近付き、恐れもなく柄に片手を掛ける。 「ん……」 それから、柄を両手に持ち替え、微かに苦笑する。 「確かに、ビクともせんな」 俺は頷く。 「剛腕の男が十人掛りでも抜く事は不可能でございます。それを可能とするのは、世に名高い、山岳に咲く美しき月見草だけかと」 女帝の背に四枚の花弁を備えた金糸の花が現れる。 (第四望) 第三望を例えるなら『狂おしいまでの渇望』であり、まだ人間の欲望の範疇だ。 だが、第四望は『完全な思い上がり』であり、神が微睡みの中で願う事に匹敵する望みだ。 つまり、その境地に至る人間は稀であり、今現在、そこに到達しているのは、リガルの女帝を含め、大陸にわずか十数人だけである。
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