第1話

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瘴気も望みの大きさにより質を変え、悪意から殺意へと変わり、粘度でも弾力でもなく、鋭さを備える。 第四望の裾を踏むのは一級禍触師の最終試験以来だが、渡りきれない事はない。 (さあ……いよいよだ) 俺が床の感触を靴裏で確認していると、ミランダが柄を握ったまま呟く。 「第四望でこの聖剣が引き抜けるなら、過去の誰かが抜いているか……ならば」 ミレーネの背で、黄金の月見草が、瞬く間に五本の櫂を備えた舟に変わる。 「第……五望……?」 初めて目にした。 それは、神のみが望める事に匹敵する願い。 トゥリュスの裾も激しく反応し、禍触師でなくとも視認できる程に瘴気の濃さを増す。 瘴気は目まぐるしく質を変え、裾の上に存在するもの全てを破壊しようと待ち受ける。 「……ぅ……ぁ……」 俺は呻き、体が勝手に後ずさる。 第五望の背に到達出来た禍触師は、これまでのところいない。 「さあ、どうする?」 女帝が俺に問う。 俺は後ずさる足を叱咤し、必死に止め、前進に転ずる。 やらねばならなかった。 喘ぎに似た呼吸を整えきれないまま、俺は裾へ踏み込む。
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