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途端、四肢のそこかしこから血飛沫が舞う。
鋭さを持った瘴気が嵐の様に吹き荒れる。
「ガァアアア!」
俺は叫び、血に赤く染まった瘴気の中で手足を振り回す。
悶えているのか、もしくは無様な舞か、自分でも分からぬまま、俺は全身に傷を増やしながら前進する。
いや、前進など全くしていない。
前進するとか、そう言ったレベルではない。ただ、裾の上に留まるのが精一杯だ。
バキッ
骨の折れるその音で、瘴気が質を変えた事に気付く。
瘴気は圧を持って俺の二本の指をへし折り、さらに爆発的に膨張し、俺を裾の外へ弾き出す。
俺は床を転がり、体を屈して痛みに耐える。
「やはり、無理か?」
振り向いた女帝が、目の端で俺を見下ろす。
俺は立ち上がり、再び裾に挑む。
「グゥウウウ!」
側から見たら、ただのたうち回り、瘴気に翻弄せれている様にしか見えなかっただろう。
俺はその中で、やっと芋虫が進む程度の距離で、前進を始める。
この瘴気は血を好む。
一つ一つの粒子が血と癒着する。
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