第1話

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それが、わずかに瘴気の重量を増させ、流れを遅くする。そして、赤色の濃淡が瘴気の濃淡となり、千変万化の瘴気を捉え易くする。 その極々わずかな変化が、裾の上に、女帝へ続く道筋を示す。 微々たる距離を、俺は強引に軸足を入れ替え、体に弧を描かせ、雑さを爪先と踵の重心移動で微調整し、振る度に血を撒き散らす腕でバランスを保ち、胴を翻して必死に進む。 そして、再び凶暴な膨張の兆しを見せた瘴気の向こう側、刺繍に向けて右手を突き出す。 圧を増した瘴気の中でさらに一本の指が折れ、それでも瘴気を抜けた右腕は黄金の舟へ。 だが、そこには背を被う様にして、硬化した瘴気が広がっていた。 鋼の硬さ。 ここまで来て、女帝の背には届かない。 もし、吹き飛ばされれば、もう一度ここへ辿り着く事は出来ない。 俺は右腕を女帝の脇へ迂回させ、そのまま体の前に回す。 折れた指で掴めるものを無我夢中で掴み、ドンと膨張した瘴気に、浮いた体が吹き飛ばされない様に耐える。 「ガァアアア!」 衝撃を耐え切った俺は獣じみた叫びを上げ、乳房を掴んでいた右腕に力を込め、左手を女帝の背へ近付ける。
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