第1話

16/18
前へ
/61ページ
次へ
霞む視界に、俺に振り下ろされる五本の剣が見えた。 「待て」 女帝の声が響く。 衣擦れの音が近付き、女帝が俺を覗き込む。 「あのドルガ村の生き残りか?憎しみだけで、前人未到の第五望を突破したか?」 「グッ……」 「面白い」 女帝が真横に差し出した手に、護衛が剣を渡す。 女帝はその剣を無造作に俺の肩へ突き刺す。 「リガル兵が妊婦の腹から引きずり出した赤子は、お前の弟か妹だったかもしれんな」 「ガァアアア!」 俺は女帝に?みかかろうとするも、体は痙攣するかの様に床の上で跳ねるだけであった。 「殺して……やる……殺してッ……やる!」 「ならば、この第六望の裾を渡り切るしかないな。もっと私を憎めば可能か?私の真の望みは叶うか?」 女帝は肩に刺したままの剣を弄び、俺の叫びが地下に響き渡る。 そして、女帝は唐突に剣を離し、踵を返しながらベリングに言う。 「生かせ。第五望を渡り切った貴重な禍触師だ。ネイリーンを探し、ここへ寄越す様に」 「ネイリーンですか?でも、彼女は……」
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加