第2話

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だが、ミランダは目を背けるでもなく、隊列が尽きるまでジッと見つめていた。 謁見の間。 俺は普段の立ち位置から、かなり壁際へと押しやられていた。 王座はサクノスの王太子が座るため、普段は重臣達が居並ぶ場所に王と王妃が立ち、必然的に重臣達が後方へ押し退けられ、俺はその重臣達の皺寄せを食った形だ。 さらに、謁見の間は各国の代表や使節団がひしめき合い、特別に設えた幅広い絨毯が入口から王座へと敷かれているため、ますます居場所が無くなり、俺はさらに端へと追いやられる。 だが、俺にとっては好都合と言えた。 赤い絨毯を挟んだ向かい側にいる、リガル帝国の訪問団と顔を合わせなくて済むからだ。 そう思っていると、最も絨毯に近い位置にいる王妃が「マティ」と、侯爵令嬢だった頃と変わらぬ愛称で俺を呼ぶ。 「……」 用とあらば仕方がない。 俺は重臣どもを掻き分け、出来るだけ目立たぬ様に、王妃の陰に立つ。 「あら?マティ、顔色が……どこか具合でも?」 「いえ……」 近くとなったリガル帝国訪問団にチラリと目を向け、女帝の後ろに控える二級禍触師のネイリーンと不運にも視線が合う。 彼女のウインクに、俺は知らず知らずの内に喉を庇うように手を当てる。 「風邪ですか?」     
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