第1話

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呪衣がやすやすと人間の望みを叶え、この世の秩序を壊さぬ様にとの戒めだ。 瘴気は俺の手足を搦め捕ろうとし、また、光を奪うため、目蓋の内に入り込もうとする。 裾の端から背まではたった二歩の距離だが、遠い。 俺は素早く瘴気の隙間を縫って頭を潜らせ、腕を通し、踵を半転させて己の胴に後を追わせる。 それは舞に似ており、俺は歪な舞を舞い、手の平を金糸の舟に当てる。 刺繍でありながら、二本の櫂が動き出す。 女が口にした告白が、王への忠誠という心の甲冑を剥ぎ取り、騎士の逞しい腕を王妃に伸ばさせ、懐へ抱かせる。 ゆっくりと唇を重ねた後、王妃は去っていく。 騎士の瞳に映る月の光が、下瞼の縁で二つに分かれ、頬を下っていく。 王への忠誠を守れなかった哀しみ。 そして、瞳に残った光が、俺に向けられる。 「貴様……何故だ……」 「悪いな。男爵」 「何故、こんな事に、彼女に協力した!?」
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